ドイツ規格のDINでは、DIN7984とDIN6912の2つの規格品が流通しています。
DIN912の六角穴付きボルトに比べて頭の低い、低頭系ネジです。
六角穴のメリットは前号Vol18で述べました。
六角穴の少し弱い部分は、六角レンチと六角穴の勘合が甘いと言う点です。
いわゆる、「遊び」が多いのです。
規格上、レンチと六角穴がキッチリしすぎている事の限界があって、現在の規格になっているのだと思います。
遊びが多いと、「六角穴の深さ」を稼がないと六角穴がなめてしまい、使いものになりません。
DIN912の頭部高さがあれば、頭部高さ内での「六角穴深さ」でねじ締めが出来るのですが、
低頭系の7984と6912では、六角穴深さが不十分で、頭部高さより深く六角穴が入ってしまいます。
これは、ボルトの頭の首飛びに即つながります。
実際、DIN7984はDIN912と同じ高トルクでの締め付けは推奨されていません。
では、DIN7984の頭部首飛びをさせないためには・・・・・
・首下R部分を巨大化させる
・不完全ネジ部を長くする
と言う規格になっています。
従って、全ねじ規格品でも、見た目が半ねじの様な感じです。
省スペース、軽量化の代償として、この頭部下の形状が犠牲になっています。
それ等を考慮して設計すれば問題はありません。
欧州のエンジニアは、DIN規格品として当たり前の様に設計に入れていますので。
ただし、日本の設計者の中には、一般のボルトと同じ首下Rと不完全ネジ部長さと勘違いされている人も多く、
非締結物に接触し、割れ等のトラブルの原因になっているのも事実です。
低頭系のねじは、便利な部分も沢山あります。
特性を理解してお使いいただければ、良い仕事をするはずです。
[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝