ゆるみに関してのコラムを5本掲載したところ、反響が大きいことに驚いています。
今回は、「低頭系のねじ」についてです。
低頭系のねじの解説には、「六角穴」のヒストリーから入らせて頂きますが、飽きずに読んで頂けました幸いです。
DIN912の規格ねじは、ドイツ規格の六角穴付きボルトです。
六角穴付きボルトは、海外メーカーが、一般の十字穴では十分なトルクが掛けられない事の問題解決ねじでした。
六角ボルトも高トルクを掛けることが可能ですが、スパナ部分の余分なスペースが必要になってしまい、構造物が大型化する傾向にあります。
六角穴は、締結体の小型化が可能になるため、世界中のエンジニアが設計に採用しました。
初期の六角穴は、切削加工でしたので、DIN912の規格書を読み込むと、切削加工で製造した場合の図面が残っています。
規格書、規格を読み込むこと自体が少ないですが、ネジマニアとしては気になるポイントです。
六角穴(ソケット)は高トルクを掛ける為に開発されたので、一般強度のねじでの採用はあまり意味を持たないので、
8.8、10.9、12.9の高強度ボルトの在庫品がどの国でも入手可能です。
ちなみに、日本市場での高強度六角穴付きボルトの在庫品は、10.9と12.9の強度区分が多く、
ヨーロッパでは8.8と12.9の2種類の在庫が多いのも特徴です。
10.9と12.9では使用する素材が同じ(日本ではSCM435の使用が圧倒的に多い)で価格差が出にくいですが、8.8まで強度を落とすと、
・使用できる素材選択肢が格段に増える
・遅れ破壊でのボルト折れのリスクが軽減する
・電気めっき後の水素脆性でのボルトの折れリスクが軽減する
等の理由で、ヨーロッパのエンジニアが強度区分8.8のボルトを設計に入れることが多いので、一般流通在庫品も豊富です。
次回は、いよいよDIN912から、DIN7984の低頭ボルトの話に移行します。
[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝