十字穴、六角穴よりも星形リセス
JIS、ISO規格で制定されているねじの駆動形状は、
・すり割り(マイナス)
・十字穴(プラス)
・六角穴
・星形(ヘキサロビュラー)
がある。
「JIS B1015 おねじ部品用へクサロビュラ穴」
がJISでの正式名称で、トルクス穴、6ロブ穴、ヘキサロビュラ穴等とも呼ばれている。
この星型穴は、海外企業が発明し、優れた機能を持っていることで、世界中に広がり、知的所有権(商標は残っているので要注意)が切れたので、ISOに規格登録されてJISへの登録となった、「一般規格の駆動穴」である。
世界中で売れたから、世界中で一般化されたから、規格制定品となった。
六角穴よりも、星形リセスの方が、駆動部分としての性能が良いので採用事例が増えたのである。
ヨーロッパ各国を旅行した人ならお分かりだが、様々な製品に星形リセスが採用されていて、ねじを取り扱う会社も、普通に在庫ラインアップしているので、気軽に買い求めることが出来る。
点接触の六角穴と、接触面積が大きな星形
ここでの接触とは、ねじの駆動部(リセス、穴)とドライバーなどの工具の接触を言う。
ドライバーへ正確なトルク制御をしても、正確なトルクがねじの駆動部からねじへ伝達されるかは、接触個所の形状に大きく左右される。
トルク伝達と言う言葉を用いるが、星形の方が六角穴よりも接触面積が大きい為、トルク伝達に優れたねじとなる。
トルク伝達が良いと何が利点・ベネフィットなのか
正確なトルク伝達がねじへ可能になると、ねじの軸力が安定する。
トルク伝達のバラツキが減少するので、より小径ねじの採用が可能になり、ねじのダウンサイジングが可能になる。
結果、非締結物のダウンサイジングが可能になり商品の軽量化、小型化が可能になる。
ヨーロッパの工業デザイナーだけでなく、ねじの技術営業者も星形リセスの利点を理解しているので普通に使用されているねじである。
日本やアジアでまだ十字穴、六角穴が多い訳
・在庫で入手できるねじの種類が少ない
・JISやISO規格の一般規格品であることの周知が低い
・ねじの取り扱い業者の理解度が低い
・ドライバーなどの工具入手ルートがまだ少ない
等があるだろう。
日本人機構設計者で、海外デザイン、海外生活者や旅行者が増えている。
日本でも、星形リセスを使用した商品を見る回数が増加している。
車関係、記憶媒体装置、スマートフォンなどがその典型例であろう。
星形リセスは、一般規格のねじ駆動形状。
今後も、機能面の優位性から、六角穴からの置き換え需要は増加するだろう。
日本だけでなく、アジア全体で星形リセスの採用がヨーロッパ並みになると筆者は感じている。
サイマグループの310スリム小ねじで星形リセスを採用しているのは、ヨーロッパ市場での販売を視野に入れているからである。
機能性でも、十字穴と六角穴では製造不可能領域があるので、より優れた星形リセスを採用しているのも理由の一つである。
[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝